「自分、不器用ですから…」と言ったのは、高倉健。私も相当不器用です。人からの助言を受けても理屈では理解できずに、経験して初めて合点が行くという鈍さです。
社会人1年目のころ、優秀な1年上の先輩と自分とを比較して自己嫌悪に陥っていました。そんな時、私の教育を担当してくれていた別の先輩は、こう言いました。「彼はすごいよね。でも10年後には、分からないよ」と。
短距離の得意な人がいれば長距離走で力を発揮する人もいるように、すべてを横並びで速さを比較しても無意味なので、マイペースで頑張れと言うことだろうと、そのときの私は解釈しました。
ところで最近、後輩を指導することがあります。その中には、飲み込みの早い子も、そうでない子もいます。けれど、数カ月後に優劣の差を感じることは、ほとんどありません。それぞれに向いていそうな作業についてもらうと、どの子もその日数分だけきちんと成長していることを感じます。
このごろ、過日の先輩の言葉の意味をあらためて考えました。
人それぞれ、別々の特性がある。10年もの間それを発展させていたら、比べようにも方向すら揃わないと言うことだったのではないかと……。
自分なりの方向に自分の速さで進めるのでいいのかなと思い至りました。
とはいえ少しは、痛い目にあうまえに回避できるようになりたいものですが……。