2008.07.26 Flashで絵を描く-Returns [Edit]
最終更新日:2013.07.02
demo1「鏡を使った作画」 A.e.Suck氏
demo2「見よ!このブラシ使い」 まつばらあつし氏
demo3「Flashベースのイラストレーション」 まつむらまきお氏
昨年夏のセミナー「Flashで絵を描く」のなか、「もっとみたーい!」とたくさんのリクエストをいただいたセッションの内容を一新して開催しました。
アニメーターのA.e.Suck氏、イラストレーターのまつばらあつし氏、まつむらまきお氏、それぞれに個性的なFlashでの描画方法は、ひとつひとつの所作にも感嘆の声が上がるほど。
さすがプロの実演は、参考になる技や鍛練方法が満載でした。
追記
- 2008.8.9
- demo1,2,3のレポートを公開しました。
demo1:鏡を使った作画
| 講師:A.e.Suck氏 何もない状態から絵が完成していく過程を実演していただき、A.e.Suck氏が作画するときのポイントを解説していただきました。 |
A.e.Suck流 手慣らし方法
― 説明の前に雪舟物語(2008年バージョン)の上映 ―
雪舟物語はこちらからご覧いただけます
タブレット(ペンタブ)の設定
- ファンクションやトラックパッドは誤動作を防ぐため基本的に全て無効
- サイドスイッチ・テールスイッチも無効
FLASH・キーボード・マウスの設定
- ガイド・吸着・グリッドもOFFで描くのが基本(初期設定として保存しておくと便利)
- 日本語入力がONになっているとショートカットが効かない事があるので、
作画中はOFFにしておく
作業上での工夫
- 下描きに使用する線は極細線(清書時に拡大表示しても太く表示されない)
- フレームサイズの赤線を引き、シンボルにしてレイヤーの最上段に配置し、ロックをかける
(イラスト画角からはみ出るのを防ぐことができる)
使用するツール
- ブラシツール・鉛筆ツール
- 作画時は描画オブジェクトをOFFに
- ブラシツールは筆圧をONに
ウォーミングアップ
手はいろいろなアングルがあるので飽きることが無く、勘を養うこともできる。
また、アニメーションの中割りを描く時に活かす事ができる事を説明した上で、実際に鏡を使用しご自身の左手を題材に、手慣らしをする様子を実演していただいた。
ウォーミングアップのポイント
- 軽く間接を曲げると自然な手を表現できる
(自然に見えるポーズと見栄えのいいポーズは違う)
- アングルにも難易度がある(例:指差しているポーズを正面から描く)
- とりあえず描く(消しゴムやundoも使わない)
- 線は実際に使わない色を使用するといい(A.e.Suck氏は赤が多い)
- 鏡に左手を映して描くと手首の付け根など、自然な絵が描ける
- ある程度下描きが描けたらシンボル化する(シンボルタイプはグラフィック)
清書する
- 清書に使用するレイヤーのアウトラインカラーは見やすいものを選ぶ
- 下書きは水滴ツールで余分な線を消して清書しやすくし、レイヤーごとロックする
- 左右が完全に対称ということはまず無いので、半分仕上げて反転させない
(絵描きとしてのプライドでもあるが、人形っぽくならないように)
- 清書時は1ptの実線か極細線を使用
- SDビデオでは線を2ptにするとよい(水平線がかすれにくい)
- ぶっとい線は迫力が出るが、表示に負荷がかかるようなら塗りに変換する
- 清書の線は交わるように描く
仕上げ
- 1枚の背景でも分割して描く
- 水滴ツールで消しにくい部分はアウトライン表示にする(確実に消せる)
- 動いたり差替えるパーツは個別にシンボル化にする(例:目、頭部)
- 動くパーツはシンボル化した時点で基準点を変形の中心に合わせておくと、あとで統一しやすい
(例:頭部の基準点は首の付け根辺りが良い)
最後に本日のために描かれたイラストを見せていただいた。
目の前で難しいアングルもスルスル描かれていくのが気持ち良かったのですが、なによりも
A.e.Suck氏が絵を描く時の目線や手の動きなどを見る事ができた貴重なセミナーになりました。
demo2:Flash の表現力でいろいろ「描く」(見よ!このブラシ使い)
| 講師:まつばらあつし氏 まつばら氏のイラストの独特なラインの制作方法と熟練の技を披露していただきました。 |
お絵描きツールとしての Flash 4大ひみつ
- 思っているよりは表現力がある(ような気がする)
- 慣れると結構描きやすい(ような気がする)
- 他のアプリケーションとの連携が秀逸(ただし Abobe CS3 関連)
- その気になればアニメが作れる
お絵描き Flash、3ナイ運動のすすめ
- 動かさない
- シンボル作らない
- それなら Photoshop や Illustrator で描けばいいじゃんと言わない
ブラシを使った Flash でのイラストレーション
- 下書きは鉛筆ツール(スムース:スムージング 50 くらい、太さ 1)で画面で使わない色で描いています。
- ブラシツールのブラシサイズは拡大率で太さがかわるので
描く時のブラシサイズと拡大率を覚えておく。
筆っぽい感じ
- 筆圧 ON にするとちょっと変なカクカク感があるので
清書はブラシツールの筆圧 OFF でスムージング100に設定してライン1本は一筆で描きます。
- ペンの動かし方のスピードによって変わるので
気にいったラインが描けるまで何度もやり直します。
- 顔などのディティールを描くときなどのみ一時的にスムージングを 40 くらいにしています。
- 下にレイヤーを作って透明度をもった淡い色でいろを塗ります。
- 影の部分は“内側をペイント”にして色の濃度を変えて描いています。
- 出力する紙によってはかなり筆っぽくなります。
ペンや鉛筆っぽい感じ
- 同じくブラシツールを使いますが逆にスムージングを 6 くらに下げてます。
- ラインにスムージングがかからないのでヨレヨレしたラインになります。
- 逆にディティールを描く場合はスムージングを少し上げています。
demo3:Flashベースのイラストレーション
| 講師:まつむらまきお氏 いつも斬新な技を編み出すまつむらまきお氏による「FLASHで描けない絵はない」講座。 今回は、前回と違ってひたすらFLASHへの溢れる愛を技に託します。 |
今回はFLASHオンリー!
「今回は、ソフトウェアにたよらないかわりにハードウェアに頼る!」
……と、おもむろに取り出したのは必殺の液晶タブレット 『ワコム シンティック12』。
まつむら氏「これ、いいですよぉ~」
ターニングポイント:「液タブ!」
- 液晶タブレットを使う様になってから、直接描けるので、もっとアナログ的な描き方がやりたくなった。
- 慣れない、また理想が高すぎるせい(?)か、従来の描き方に満足ができなくなった。
と、ここでまったく新しいスタイルが誕生。
まつむらTIPS
液晶タブレットを使うときの必須アイテムふたつ!
よりによって、右手が触るところが熱い。マウスのハンドレストのようなものを置いておくとするする滑ることと熱さが緩和されるので必須。
サンワサプライの肉球のようなものを手首にあてると都合がいい。(とのことでしたが、実はバッファローのGELリストレストっぽいです)
http://buffalo-kokuyo.jp/products/catalog/item/b/bpd-g04/
- その2 Apple Bluetoothの小さいキーボード(Macユーザーの場合)
(これは、キーボードショートカットが必要なため。)
液晶タブレットの設定について:両サイドの各ファンクションはがっつりではないけれど、ある程度使います。
『UNDO / 100% / F4キー』など、これは当人が好きなものにすればいい。
メニュー関係はパソコン本体の画面のほうに表示しておく。そうしておけばボタン一つで、向こうのウィンドウのツール関係は液晶に移動させることができるのでとても便利。
絵の具で描いたまんまの絵
水彩風タブローの描き方
ブラシ、筆圧オンで絵を描いて行く。(ここで全員が「おや?」) みるみる水彩タッチのイラストが……
『水彩絵の具にはぬれ色と乾いた色がある。透明水彩などは乾くと紙の質感が表面に現れる。それをFLASHで再現したいと思った。』
『たとえば、ペンで押しながら色を塗って行くとぬれた感じが出るけれど、手を離すと水彩絵の具が乾いた感じになる。
どう?面白いでしょ? 』
更に、水彩特有の色ムラやにじみだって自由自在。観客呆然としてしーん。
秘密のテクニック大公開!
- なんとなく分かった人も、まったく予想もつかなかった人も、秘密の公開にここで全員が「お~~~!?」
- Phothoshopでは出来ない、FLASHならではの秘密が!!
と……この続き、秘密のレポート大公開は、この9月に大阪で行われる『FLASH POWER SESSION 2008』にて。乞うご期待!
まつむらパレットの技
- パレットは、もうずっと前から色の作り方基本のパレットの他によく使う色を登録しています。
グラデーションも… 管理してません。 昔からぬか床のように登録しています。
- 影色は桂馬飛び……じゃなくて隣の上ブロックの左上が影色っていう法則がある。(マクロメディアカンファレンスの1回目にやっている記憶がある… それ以来、この法則ってちゃんと守られている)
けれどもカラーパネルも使いやすいのでよく使います。
- カラーパレットは、デフォルトがRGBになっているのだけれど、RGBって光の三原色なのでWEBには向いているけれど、印刷を考えたりする時は、HSB(色:彩度:明度)にする。
このカラーパレットで、肌色を入れて『明度、彩度』をコントロールして影色を作る、というやりかたもしています。
- また、その他に描画オブジェクトを使って影をつける方法もあります。
影用の黒アルファ49%のものを描画オブジェクトにして重ねて影にします。(この時の黒のアルファ値は好みで…)
ムラのコントロールだってしたい!
そもそも絵の具で描くとムラができるよね。 それをFLASHで再現したいと思いました。ちょっとだけ方法を公開します。
- 放射状のグラデーションを作る(設定画面では、元の色を右、少し薄い方を左にする)
- ここにムラを付ける、というところにグラデーションで円を描く
- グラデーションの中心が外円のセンターに出るので、あとでグラデーションのセンターやサイズを変更するときれいに出来る。
もっと先、FLASHならではの表現力
ぼそぼそした感じに仕上げる方法
さらに輪郭線をぼそぼそとした感じに仕上げる技をプレビュー。これはPhotoshopではできません。
このテクニックも9月の『FLASH POWER SESSION 2008』で大公開っ!
FLASHで絵を描くことの魅力は、直接どんどんと直感的に重ねて描いてゆけること。(「背面をペイント」「内側をペイント」というような設定を巧く使うと色々なことが出来る)
けれど、修正が入ると大変なので、仕事の時はレイヤーを分けて、キャラクターと背景などは別に描いて置きます。
お楽しみじゃんけん大会
今回もスタッフや関係者、参加者の皆様から本やCDをご提供いただきました。
たくさんの賞品、ありがとうございました。
オーム社さんより
FLASHアニメーション制作バイブル 2冊
オーム社さんより
アートのための数学 2冊
こやまけいこさんより
Classic@comics コミックで出会った名曲たち(ジェネオンエンターテインメント) Vol1.2 各1枚
1は「のだめカンタービレ」、2は「神童」に登場したのピアノ曲のCD。
こやまさんはこちらに4コママンガを掲載されています。
『コミスタで描いて、FLASHにもってきて色塗りしてPhotoshopで仕上げしました!』
二次会
今回の二次会は妙にまったりと。 毎度おなじみ新宿西口石狩川でおこなわれました。
今回の恒例になった参加者自己紹介テーマは「初めて見た映画は?」
「ドラえもん」や東映まんが祭り等で映画人生のスタートを切った幸運な子供達から、映画は「四谷怪談」で始まったという強者まで!
映画の話題に一時場内はたいそう盛り上がりました。
その後も、イラストのテクニックや、話題のiPhone、そしてFlash談義と、話題はどこまでも広がってゆきました。
いったんお開きの後、それぞれの分科会に別れて更に交流の時は続きました。
- レポート作成
- 高杉美紀、徳久達彦、AYA
- 写真
- 佐々木史織、桜井和貴
(敬称略)
なお、当日お知らせのあったイベントは下記の4つです。
またいずれかの会場でお会いしましょう♪
この記事へのコメント
●1.とんび(2008年07月29日 11:39)
拡大縮小して線の太さが変わらないようにするには、[プロパティ]の[伸縮]を「なし」にすればいいんじゃないかなー。と思いつつ、言い忘れて帰ってきました。
●2.A.e.Suck(2008年08月02日 00:50)
次回は言い忘れないようにお願いします(笑)ナイスなツッコミになったと思います。
[伸縮]>[なし]についてはアニメ制作バイブルのP87でも紹介しました。
ただ、ヒント処理や形状同様、書き出しが8以上に限定されてしまうので、それでもよければということになります。